海外渡航用陰性証明書は、検査を受け、コロナ陰性と判定されることで発行できる書類です。
また、このときに実施する検査にはさまざまな方式があり、国によっては、特定の検査方式後に発行された海外渡航用陰性証明書しか提出を認めていないことがあります。
今回は、検査方式の種類について解説します。
海外渡航用陰性証明書の発行に伴う検査方式は8種類
海外渡航用陰性証明書の発行に伴う検査方式には、以下の種類があります。
・RT-PCR
・LAMP
・TMA
・TRC
・Smart Amp
・NEAR
・次世代シーケンス
・抗原定量検査
それぞれの特徴を見てみましょう。
RT-PCR
RTはReverse Transcriptionの略であり、逆転写を意味します。
逆転写とは、RNAを鋳型としてDNAを合成することであり、逆転写によって合成されたDNAをcDNAと呼びます。
RT-PCRは、こちらのcDNAを用いて行うPCR検査です。
本手法により、タンパク質をコードする遺伝子を選択的に増幅したり、少量しか存在しないmRNAを増幅して解析に使用したりすることが可能になりました。
LAMP
LAMPは簡易PCR検査とも呼ばれるもので、PCR法と同じく、抗体からRNAを検出する方法です。
PCR法に比べて増幅効果が高く、短時間で検査できます。
また、PCR法よりも全体一致率が高いのも特徴で、その数値は96%(陰性一致率100%)にも上ります。
TMA
TMAは、PCR法と同じく核酸増幅法の1つで、逆転写酵素とRNAポリメラーゼを利用し、等温で目的のRNAを大量に増幅します。
PCR法のように、1細胞に1つの遺伝子をターゲットにする方法よりも、1細胞内に数千コピー存在するRNA遺伝子をターゲットにしている方法で、感度を必要とする感染症などの検査へ応用、実用化されています。
TRC
TRCは、核酸増幅検査の1つであり、一定温度でRNAを複写増幅する転写逆転写酵素法と、検出対象の核酸と結合することで蛍光が増幅する発蛍光プローブ(INAFプローブ)を組み合わせた方法です。
Smart Amp
Smart Ampは、理研が開発したPCR法に代わるDNA増幅技術です。
一定温度で複製が進むため、簡便かつ高速な検査が可能です。
非対象に設計されたプライマーと、鎖置換反応活性を持つAac DNA Polymeraseを用いるのが特徴です。
NEAR
NEARは、Nicking Enzyme Amplification Reactionの略であり、こちらも核酸増幅法の1つです。
数ある核酸増幅法の中でも、急速に普及が進んでいる方法であり、陽性で最短5分、陰性で13分という高スピードかつ高精度の検査を実現します。
次世代シーケンス
次世代シーケンスは、コロナの全遺伝子配列の変異を把握するものであり、一度に大量の配列情報を取得できるため、サンプル数が多くても2週間程度で検査結果を受け取ることができます。
また、未知の変異の探索や、感染経路の分析も可能です。
抗原定量検査
抗原定量検査は、専用の機械により、抗原が検体にどれくらい含まれているかを検査するものです。
基準値を超えるとコロナ陽性、超えなければ陰性と判断されます。
検査方式の制限がある国について
冒頭で触れたように、国によっては、特定の検査方式後に発行された海外渡航用陰性証明書でなければ、提出が認められないことがあります。
例えば、中国は現在、RT-PCR以外の検査方式で発行された海外渡航用陰性証明書は許可されておらず、抗原定量検査も必ず受けなければいけないことになっています。
また、韓国は抗原定量検査後に発行された海外渡航用陰性証明書のみ、提出が認められていません。
ちなみに、イギリスやイタリアなど、そもそも海外渡航用陰性証明書を発行し、提出する必要がない国への入国時には、これらの検査方式について考える必要はありません。
まとめ
ここまで、海外渡航用陰性証明書の発行に伴うコロナの検査方式について解説してきました。
今後検査を受ける方は、受診先の病院で採用されている検査方式がどれに該当するのか、また渡航しようとする国の入国条件では、どの検査方式が認められているのかについて、事前に確認しておきましょう。
そうしなければ、検査費用や海外渡航用陰性証明書の発行費用が無駄になってしまう可能性があります。