新型コロナウィルス『オミクロン株』の特徴

オミクロン株

オミクロン株とは?

オミクロン株とは、2021年11月24日に南アフリカから報告された新型コロナウイルス変異株の1種です。WHO(世界保健機関)はこのB.1.1.529系統の変異株を11月26日に「懸念される変異株 (Variant of Concern; VOC)」と位置づけ、ギリシャ文字順に「オミクロン」と名付けました。

VOCとは、伝播性の上昇、病毒性の上昇、公衆衛生対応・診断・治療・ワクチンの効果の悪化、のいずれかが明らかになった、公衆衛生上問題となる変異株のこと。2022年1月現在で、VOCはアルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、オミクロンの5つになりました。

オミクロン株の感染力は?

オミクロン株は、まだ明らかでない部分がありますが、他の株よりも感染(伝播)しやすいと考えられています。そもそもウイルスの伝播しやすさには、

  1. ウイルス自体の細胞に侵入する能力 (infectivity)
  2. 感染者側のうつしやすさ(contagiousness)
  3. 未感染者側の罹りやすさ(susceptibility)
  4. ウイルスに対する環境ストレス(温度、湿度、換気など)

が関係します。(詳細はこちら)そのうち「ウイルスが侵入する能力」に関しては、オミクロン株のウイルス表面のスパイク蛋白は細胞表面のACE2への親和性が高く、細胞へ侵入しやすいと考えられています。また実際にオミクロン株がデルタ株より速く感染拡大しており、新規感染の中でオミクロンが優位を占める国も多くなっています。接触者への感染を追跡した研究で、オミクロン株はデルタに比べ伝播性が高いことが示唆されています。例えば、英国で家族内感染を追跡した研究では、接触者に伝播する確率が、デルタ感染者からは約10%であったのに対し、オミクロン患者からは18%でした。

オミクロン株による症状の特徴は?

オミクロンに感染した人の中には、無症状で済む人から、肺炎を起こして死亡する人までさまざまです。しかし、いくつかの研究で、通常の新型コロナの感染症と以下の点が異なる可能性があります。

  • 発熱(72%)・咳(58%)・だるさ(50%)・のどの痛み(44%)などの風邪症状が中心沖縄での報告から)
  • 潜伏期間が短い可能性: アメリカの報告例によると潜伏期間の中央値は3日としています。通常の新型コロナが5日ほどと考えられているので、2日ほど早いということになります。

ただし、いずれにせよ小規模の臨床研究がほどんどなので、大規模なデータの集積結果が待たれますね。

オミクロン株の重症化リスクは?

オミクロンに感染した場合他の変異株に感染した場合より重症化しやすいかは、まだ明らかになっていませんが、症状が軽い傾向にあることを示唆する研究結果がいくつか報告されています。

英国インペリアルカレッジロンドンからの報告では、「オミクロン感染者はデルタ感染者より、病院にかかるリスクが20〜25%、一晩以上入院するリスクは40〜45%低い」という結果になりました。またエディンバラ大学からは、11月1日から12月19日までの入院データを参考にオミクロンはデルタに比べて入院するリスクが3分の2低下していると発表され、デンマークからの報告でも、オミクロン感染者の0.6%が入院したのに対し、他の変異株の感染者の入院は1.6%であったとしています。

これらの背景として、査読中の香港大学の研究結果では「オミクロンは気管支内で、デルタや通常株と比べて速く増殖するのと対照的に、肺内での増殖速度は相対的に非常に遅い」可能性を示唆しています。実際に肺炎が起きにくいのであれば、こうした理由からかもしれませんね。

ただし、入院率については以下の理由から慎重に解釈する必要があり、安易に「オミクロン株は重症化しないから感染しても問題ない」と考えるのは危険です。

  • 新規変異株であり、発症から入院までに時間がかかること
  • 入院率の低下が、純粋にオミクロン感染の重症度の低さか、過去の感染やワクチンの効果かが不明であること
  • 入院基準が時期によって異なることがあり、酸素吸入や人口呼吸器の使用率・死亡率などのより医学的なデータが必要であること

オミクロン株に対するワクチンの効果は?

英国健康安全保障庁(UKHSA)では、147,597人のデルタ患者と68,489人のオミクロン患者の解析から、ワクチンの効果(2回接種後と3回接種後)で検討されています。(アストラゼネカ製・ファイザー製・モデルナ製)その報告によると

  • 2回接種の場合:オミクロン株に対しての予防効果はある程度見られるもののデルタ株よりも低く、いずれのワクチンでも2回接種後20週経過すると、オミクロン株に対するワクチン効果はゼロに近くなる
  • 3回接種の場合
    • アストラゼネカ製2回接種後、3回目にファイザー製かモデルナ製:2~4週間後にはオミクロンに対するワクチン効果は上昇しますがおよそ60%にとどまり、5~9週後には45%程度
    • ファイザー製2回接種後、3回目もファイザー製:1週間後70%程度で、10週間経過すると45%
    • ファイザー製2回接種後、3回目はモデルナ製: 9週後まで70~75%
    • モデルナ2回接種後の3回目のワクチン効果については解析対象者がなくデータなし

という結果となりました。ただし「観察研究であるため、他の要因が絡んでいる可能性があること」「オミクロン株感染例は少ないこと」から、推定値の評価には注意が必要です。

また、この報告は発症予防効果についてであり、オミクロン株感染による重症をワクチンがどれだけ予防できるかはこれからの検討されることになります。

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