日本はアメリカやイギリス、ロシアといった他の先進国と比べて、圧倒的にPCR検査数が少ないことで知られています。
「なぜもっと検査数を増やさないのか?」と疑問に思う方も多いかと思いますが、こちらにはいくつかの理由があります。
ここからは、主な理由について解説したいと思います。
保健所がパンク状態だから
日本でPCR検査数が増えない理由としては、まず帰国者・接触者相談センター機能を担う保健所がパンク状態であることが挙げられます。
現在は、新型コロナウイルス変異株のオミクロン株が猛威を振るっていて、保健所による入院や療養の判断にはますます遅れが生じています。
大阪市などでは、疫学調査の手間を省くため、インターネットを通じて感染者に同居家族、基礎疾患の有無などを記入してもらう独自の仕組みを設けているケースもありますが、それでも業務過多であることは明確です。
エリアによっては、入院先を確保するための仕組みが十分機能していないところもあります。
専門家がPCR検査を増やす必要がないと考えているから
厚生労働省で医療政策を担う医系技官、周囲の専門家たちは、PCR検査を増やす必要がないと考えています。
この姿勢は、コロナ流行当初から一貫していますが、こちらも日本でPCR検査数が増えない理由の1つです。
また、CMMID COVID-19ワーキンググループは、2020年11月に“コロナ感染を検出するためのさまざまな頻度での無症状感染者へのPCR検査の有効性の推定”という論文を発表し、無症状の方へのPCR検査が有効で積極的に活用すべきと結論しています。
こちらの論文は、イギリスでは大いに話題になりましたが、日本の厚生労働大臣は触れませんでした。
地方衛生研究所がリソース不足だから
地方衛生研究所は、地域における保険・衛生業務の科学的・技術的中核を担う公的機関です。
地域によっては環境保全業務なども担っていることから、名称は環境衛生研究所、健康安全センターなどまちまちです。
また、地方衛生研究所は内部に感染症情報センターを置き、感染の有無を調べるPCR検査などの対策を行う公的拠点の1つとして機能していましたが、当然こちら以外にも業務は数多くあります。
限られたリソースの中、前述した環境保全業務や、地域保健に関する調査・研修・指導、公衆衛生情報等の収集・解析・提供なども並行して行わなければいけないため、なかなかPCR検査のみに時間を費やすのが難しい状況となっています。
遺伝子検査に精通した人物が少ないから
医療機関の現場には、PCR検査を行うにあたって重要な存在となる、遺伝子検査に精通した人物がほとんどおらず、こちらも検査数が増えない理由の1つだと言えます。
PCR検査では、検体を採取し、それを試薬に入れるなどして特殊な機械にかけますが、試薬の調整には1mlの1/1,000ほどの分量を正確に取り分ける技術が求められます。
また、こちらの作業には感染リスクも伴い、慣れない作業で偽陽性や偽陰性を増加させる可能性もあることから、なかなか政府の目標検査数である1日2万件を達成できずにいます。
その他の理由
日本でPCR検査数が増加しない理由には、他にも以下のようなことが挙げられます。
・保険適用後、一般の医療機関は都道府県との契約がなければ検査できなかったから
・検体採取者、検査実施者のマスク、防護服などの感染防護具が不足していたから
・民間検査会社などに検体を運ぶための特殊な輸送機材が不足していたから など
まとめ
ここまで、世界の先進国と比べて、日本のPCR検査数が増えない理由について解説してきました。
今後、日本において検査数が爆発的に増える可能性は低いですが、国内の感染者数が日々過去最多を更新している現状を考えると、現在より検査数が増えることはほぼ確実です。
もちろん、検査数が増えても感染者数が減少しなければ意味がないため、政府や自治体はこれからもさまざまな施策を打ち出すことになるでしょう。